F1のタイヤルールとピットイン戦略
「F1の楽しみ方がわかる!F1初心者講座」第3回目は、決勝レース中のタイヤルールとピットイン戦略(タイヤ交換をいつ行うか?何回行うか?)についてです。F1好きの1児のママ・フェニックスA子(F1歴4年目)がお伝えします。
決勝レースでは、1レース中に何回、いつ、どのタイミングで、どのタイヤに交換するかが最も重要な戦略となります。
それはなぜでしょう?タイヤルールとピットイン戦略について解説します。
このページの目次
F1のキモはタイヤルール(持たせ方)
F1レースといえば、50周以上も同じコースを回り続けるスポーツです。
これこそが、F1を知らない人に「そんなことをして何が面白いのか・・・」と思われる部分でもあります(笑)
しかし、ドライバーやチームが何を考えて50周以上もグルグル回っているのか。その中身を知るとレースがぐっと面白くなりますよ!
<フェニックスA子のF1初心者講座:記事一覧>
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F1のタイヤは特別仕様。溝が少なく溶かしながら走る
F1のタイヤは特別なゴムを使って作られており、普通の車のタイヤとは全く違います。
普通の車のような溝はなく、熱でゴムを溶かしながら、溶けたゴムを滑り止めにしながら走るのです。
このため、タイヤの寿命はとても短く、1つのタイヤで50周以上のレースを持たせることは不可能で、レース中に1回以上の「タイヤ交換」が必要になります。
F1レースで、タイヤの温度や削れ具合を管理することは、とても大切なことなんですね。
F1の路面は超暑い!柔らかいタイヤは溶けてなくなる
サーキットの路面温度は、特に昼間のレースでは光を浴びてかなり高くなります。
夏の昼間のレースだと路面温度50度を超えることも。
F1カーは猛スピード(時速300km以上!)で走っているので、タイヤはただでさえ摩擦で熱を持って溶けていくのですが、この路面の暑さでさらに温度が上がり、すり減っていくのです。
タイヤのゴムが溶けて減ってくると、ちょっとしたハンドル操作で横すべりしてしまい(「グリップがなくなる」と言う)、ドライバーは古いタイヤになればなるほど、車のコントロールがしにくくなります。
タイヤは有限、時間も有限
レースは金曜から日曜まで、フリー走行3回、予選、決勝と別れて行われますが、使えるタイヤの総数はあらかじめ13セットと決まっています。
そしてタイヤは、ドライ全5種類+雨用2種類があり、レースで使われるタイヤはFIAによってレース毎に指定されます。
<タイヤの種類:2019年>
路面 | 名称 | 色 | 2018年対比 | |
柔 | ドライ | C5 | *レースで使われる3種類の中で柔らかい方から 赤/黄/白 | ハイパーソフト相当 |
↑ | C4 | ウルトラソフト相当 | ||
C3 | ソフト相当 | |||
↓ | C2 | ミディアム相当 | ||
硬 | C1 | ハード相当 | ||
– | ウェット | インターミディエイト | グリーン | |
– | フルウェット | ブルー |
2019年からは、タイヤの分類が変わりました。2018年まではドライ7種類があり、それぞれに色分けされていましたが、今年からは1レースで常に「赤/黄/白」の3種類で表現されます。
白は硬く、赤は柔い。
タイヤの種類はC1〜C5があり、そこから3種類が選ばれます。その3種類の中で、もっとも柔いものが赤、中間が黄色、もっとも硬いものが白になるということですね。
各チームはこの3種類のなかから配分を考え、13セットの組み合わせを選ぶことになります。
速くて溶けやすいタイヤばかり選ぶと、磨耗してしまって持たなくなるため、バランスが考えどころですね。
上記の画像は2018年仕様のものです。いろいろな色がありました。
戦略はチームとドライバーによる共闘
車に乗るのはドライバー、データを見て指示を出すのはチーム。
この2者が協力しないと、レースは成り立ちません。
たとえば、路面の状態やタイヤの状態を把握できるのは、実際に運転しているドライバーだけですし、それをラジオでチームに伝えるのもドライバーの役目です。
そして、他のチームの状況を考えながらレースを把握し、タイヤの交換をいつするかを考えるのは、主にチームの役目です。
時には協力して決めることもあるし、意見が食い違ってケンカをしていることもあります(笑)
0.001秒の世界!F1で失う時間の重さ
F1の世界では、0.001秒刻みで時間が計測されています。
そんな中、人の手で行うタイヤ交換という作業には、可能な限りの速さが求められるのです。
- ピットイン:タイヤ交換などの目的で、一旦ピットへ戻ること
タイヤ交換はわずか2秒台、ピットインは約20秒台
車が4つのタイヤを交換するためにピットに入るとき、1度のタイヤ交換で失うタイムは約20秒台です。
これは、車がピットレーン(ピットに向かう横道)に入ってから、元のレースに戻るまでのロスタイム。
純粋にタイヤ交換の作業時間は、なんとわずか約2秒。
中継を見てると、本当にあっという間で驚きます。
たった数秒のミスが勝負の明暗を分ける
しかしタイヤを変えているのは人。時にはミスをすることもあります。
タイヤをはめたつもりがはまってなかった、持ってくるタイヤを間違えた・・・
そこで失う数秒間で、負けが決まることだってあるのです。
こう言った作業ミスは、1年を通すと割と見られます。ピットクルー(作業員)も人間ですから。
ピットインはいつ?戻り位置はライバルの前か後ろか?
さて、ピットインをするだけで20秒以上を失うということは上で説明したとおり。
じゃあ、いつその20数秒を失うか?というのが、タイヤの管理に次ぐ、レースのもう一つのキモです。
「失う20数秒」をどこで取るか
タイヤを交換するだけで20秒以上を失う。でも、1つのタイヤで最後まで走りきれない以上、それは全ての車が同じ条件です。
問題は、そのタイミングをどこにするかということ。
考える要素としては、ざっとこんなことがあります。
<ピットイン(タイヤ交換)のとき考慮すべきこと>
- ライバルはいつタイヤを変えるか?【ライバルの順位】
- 今タイヤを変えると、最後まで持つか?あるいは、このまま走ってまだ持つか?【タイヤの耐久】
- 雨が降りそう、あるいはあがりそう【天気】
- タイヤを変えると速くなるか、運転しやすくなる。それでライバルを抜けるか?【速度】
- いまピットに入ると、戻る位置はどこか?【(見かけ上の)順位変動】
- 遅い車にひっかからないか?【トラフィック(混雑)】
上に行くほど重要視されてる感覚です。
本当は2が一番大切なことなのですが、タイヤを変えるためピットインすることで、ライバルに有利な状況になってしまうのはまずい、ということですね。
タイヤが磨り減ってきてても、雨が降りそうでも、とりあえずライバルの出方を見ることはよくあります。
速く動くほど失敗する可能性もあるのは、サッカーの選手交代と似てますね。
レース戦略をひっくり返す「セーフティーカー」
こういった考えに考えた戦略をすべてひっくり返してくれるのが、「セーフティーカー」の存在です。
セーフティーカーは、レース中に事故が起こって破片が飛び散った時などに出てくる車で、これが出てくると、安全のためレースに制限がかかり、「前の車を抜いてはいけない」状態になります。
こうなると、「どうせ抜けないんだったら、タイヤをすり減らしてまで速く走る意味はない」ということになります。
そして、後ろの車が追いつきやすくなり、車同士の感覚が狭くなります。
全ての車が繋がってトレイン状態になるのです。
「これはちょうど良いタイミング」と、タイヤ交換をするチャンスでもありますね。
*ちなみに、セーフティカー中に車が蛇行しているのは、別に煽っているわけではなく、速度が落ちることでタイヤが冷めないようにするためです。
蛇行することで、タイヤ全面を温めているのです。
トップ3チームとその他チームの大きなタイム落差
タイヤとピットインをめぐる、レースの戦略を説明してきました。
ここで、残念なお知らせがあります。
現在のF1レースは、メーカーによって車の性能に差がありすぎて、トップ3チーム(メルセデス、フェラーリ、レッドブル)とそれ以外のチーム(中団チームと呼ばれる)で、速度が違いすぎるのです。
その差は周回を追うごとに積もり積もっていき、レース中程をすぎるとその差はなんと20秒を超えることも。
つまり、トップ3チームは、それ以外のチームより20秒以上も先を走っているということですね。
そして、1回のタイヤ交換で失うタイムは20秒台。
つまりトップ3チームは、「中団チームより1回多くタイヤを交換しても抜かれない」という状況ができてしまいます。
なんともイビツですね・・・。
そのせいで、メルセデス/フェラーリ/レッドブルのトップ3チームは、お互いだけを気にすればいいという場面も多くなります。
同じF1というカテゴリで、2つのレースが同時に行われる感じでしょうか。
批判は当然、多いです。
まとめ
F1初心者も楽しめるF1講座第3回目は、タイヤ交換とピットインについてでした。
タイヤは熱によって擦り切れて行くので、「持たせる努力」と「交換するタイミング」が大切になります。
そしてピットインは、それだけで20秒以上を失うので、どこでカードを切るかが重要な判断になります。
ライバルを出し抜くために、よく考えてやらなきゃいけないということですね。
その辺がなんとなくわかると、F1レースはもっと面白いものになりますよ。
私も、全部はわかってないので解説頼みですが(笑)
<フェニックスA子のF1初心者講座:記事一覧>
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